私も前からこの郵政法案を通せば小泉政権は求心力をなくし、次の総選挙では民主党政権の確立が高くなると主張していました。最大のチャンスを逃がしてしまいました。
今回の総選挙は民主党にとって党の存立を問う選挙になると思います。どれだけ国民・無党派層の支持を得られるかです。ぜひとも日本国民の目覚めを期待したい。昨日の新聞記事で、新生銀行のインド人部長が、日本人は世界一保守的だといっていました。私の数少ない外国人との接触でもその意見に100%賛成です。今度こそ「政権交代を楽しむ」気持ちで投票してほしいと願っています。
私の読んでいるmag2メールマガジンの”大前研一『ニュースの視点』”を参考までに転送致します。どうか宜しく!それでは、「大前研一ニュースの視点」をお楽しみください。
民営化反対派と他政党を圧倒する小泉戦略
今回は小泉首相が郵政民営化法案の是非を国民に問う総選挙となりました。争点はただ一つ、郵政民営化にイエスかノーか。マニフェストでさえ必要ないと思われる選挙です。
私はこの法案の中身はよくないと思っています。反対派に妥協しすぎたあげく、民営化とは名ばかりの内容となってしまったからです。特定郵便局は守られますし、銀行、保険会社、配達会社も巨大なまま残されることになります。ですから小泉さんが20年前に主張していたものとは全く違う、見るも無惨な法案内容になっているので、その点ではつぶさなければいけないと思っていました。
しかし今回の参議院での否決の仕方を見ると、そういう法案内容の議論ではなく、要するに自分たちが「反対した」ということを地元に知らしめて恩を着せようという自民党の人たちがいたということです。
もし法案に反対なのであれば、その反対の理由を挙げ、ここを直すべきだということを言わなければいけなかったのですが、この人たちは反対したという事実だけが欲しかった。そのようなこともあって小泉さんは一気に解散へと突き進んだのです。
法案に反対した議員たちは、郵政民営化をやると言っていた小泉さんを自分たちが総裁に選んだにも関わらず、自民党員としての覚悟をすっかり忘れて、自己中心的な行動に走りました。ですから党の公認を得られず、対抗馬を立てられるというのは、選択肢として当たり前のことです。
小泉さんとしては国民にイエスかノーかを問うために、この反対派の人たちの選挙区に賛成派、つまり郵政民営化にイエスの人たちが投票できる対立候補を立てなければならなかったというわけです。
反対派37人の選挙区に刺客として送り込まれた人たちは、比例区でもトップに置かれるので、例え小選挙区で落選しても比例区で必ず当選できるようになっています。
一方、反対派の人たちは公認が得られないので無所属で出ることになりますが、そうすると比例区には出られないので落選してしまう可能性が高い。あるいは寄合い所帯の即席新党を作って戦わなければなりません。
つまり、今の選挙制度はそういう欠陥があるのです。
そういうわけで自民党は余裕を持って選挙にのぞみ、しかも話題性の高い人を刺客に選ぶことで、マスコミの話題を釘付けにしています。
小泉さんは今回の解散・総選挙をはじめからねらっていたと思われます。小泉さんは政局の読みがうまいと言われていますが、ケンカにもめっぽう強く、橋本派、亀井派といった政敵を相手に、これまで連戦連勝してきました。
今度の選挙も、ほとんどの人がもう1回小泉さんに勝たせて法案を通すのが正解だと考えているでしょう。マスコミも今頃になって「官から民へ 大きな政府より小さな政府」と書きたて、この法案は通すべきだったというようなことを言い出していますし、小泉さんの読みどおり、今回も勝算は確かなものになりつつあるようです。
争点は郵政民営化のみ? 日本国民の政治レベルが問われる総選挙
今回の総選挙の争点が郵政民営化一本に絞られたことで、民主党はすっかりかやの外に置き去りにされてしまいました。というのも、民主党はこの郵政民営化法案に反対したからです。
私は、民主党は政権が欲しければ、どんなことがあってもこの法案を通してしまえと言っていました。この法案以外はアジア外交問題など、小泉さんにとってはマイナスのものばかりですから、郵政民営化法案を通した小泉政権は、来年9月の任期までもたず、今頃はレームダック(※)になっていたはずなのです。
ですから民主党は「民営化そのものには賛成するが、この法案は悪法なので、民主党が政権を取った後、不具合な点は我々の手で直す」というふうに、とりあえずこの法案を通す方向に持っていくべきだった。
そうすれば、次の政権はやはり民主党に任せて、増税や年金の問題とかに取り組んでもらおうという気運も高まり、「自民党は1回頭を冷やせ」という流れになっていたでしょう。
私は1ヵ月前の状況だったら、次は99%民主党が圧勝すると思っていました。なぜなら小泉政権はこの4年間で何もやっていませんし、郵政改革など国民にとっては、そんなに重要な問題ではないからです。
しかし、民主党は法案に反対してしまった。今度の選挙では反対派のところに自民党の賛成派の対立候補を立てたことで、この賛成派議員が改革派のような印象を与えています。そうすると民主党は法案反対に回ったことで改革反対派のイメージが植えつけられる。これは民主党にとって、最悪のシナリオです。
民主党の今度の衆院選のスローガンは「日本を、あきらめない。」ということで、新しいマニフェストも作っています。ところが、もっと重要な争点がありますといくら訴えても、誰もそれが争点だとは思っていないし、マスコミも大きくは取り上げない。そういうことで民主党は、今回の選挙で政権を奪うチャンスを逃したばかりか、非常に苦しい戦いを強いられると思います。
しかし、「争点は郵政だけではない」ということに気付き、「民主党に1回政権を取らせてみよう」と考える国民が何%いるかという点においては、おもしろい選挙になると思います。
小泉首相の戦略やマスコミの扇動に目を奪われずに、どこまで政治家、政党の政策を吟味できるか。今回の選挙は日本国民の政治レベルを知る上でも重要な試金石となるでしょう。
※注釈:
レームダック…任期終了を間近に控え、政治的影響力を失った大統領や首相を比喩的にいう語。
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