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4 地域プロジェクトと国の制度

 地域の問題、地元の問題をどのように考えるのか、どのように解決できるか。

 これは小選挙区制度の許、選ばれた国会議員にとって重要な問題です。これまでは選挙区内に新幹線の駅を創る、高速道路を誘致する等々、要は地元に公共事業を誘致する"仕事"が大物政治家の証であり、さらには"その見返り"の部分を蓄積する、もしくは見返りの部分を他の政治家に配分する仕組み等が派閥政治の根源ともいえました。もしそうであれば、これからは根底から変えていかなければなりません。

 では、どのようにして選挙区内の具体的な問題に答えていけばよいのだろうかを、国会議員として考えてきました。そうして今現在に至った答えは「地元の問題を国の制度に則って解決を目指す」ということです。ここではその地元の問題が則る"国の制度"というものを説明します。

 地域の問題といっても多種多様です。また問題の多くは、ひとつ解決してもまた別の問題が発生するという根本的な問題を抱えています。そういうことも承知の上で、ここでは"ハードとソフト"、"産・学連携"(大きな書店の経営学のコーナーなどでよくみる月並みなことばですが)を鍵として、2つの問題を掲げて、それを解決するためには国のどのような制度があって、どのように活用すればよいのか、を説明したいとおもいます。

地元の具体的な問題

1.駅前の商店街再開発を地元で考える

2.大学の研究室で開発した教材ソフトを地元で事業化する

 まず"駅前再開発を地元で考える"場合どうすればよいのかを、具体的に"国"にヒアリングしてみました。国といってもおおきいですので、まず窓口を絞らなければなりません。地元の"駅前"は規模が巨大ではないと考えて、中小企業庁を所轄する経済産業省にヒアリングをかけました。所轄部である中小企業庁商業課の回答は「駅前再開発の場合、ハードのプロジェクトとされる。国にもさまざまな支援制度があるが、地元の問題は地元で解決してもらうのが基本です。したがって窓口は県または市(横浜市など政令指定都市の場合)でありそちらに相談してほしい。補助金の場合基本的に申請者が1/2負担し、県もしくは市が1/4、国は1/4負担することになっていたが、最近は申請者の負担を減らすために、申請者1/3、県市1/3、国1/3という負担比率を取られる場合もある。ただ駅前再開発となると、基本国土交通省の所管と考えられ、商店街開発となると当省となる」との対応でした。「では駅前の商店街再開発場合どうかは?」との質問に対しては「どちらか難しい。しかし、そのような場合でも窓口は自治体であって、自治体が割り振りを考える。ただ再開発がつく場合、国土交通省が所轄する場合が多い。申請者もゼネコン系のシンクタンクなどが多いと聞いている」という回答でした。

 中小規模プロジェクト向けのさまざまな補助金の中「駅前の商店街再開発を地元で考える」が該当しそうなものとして、中小企業庁所轄のI商店街等活性化事業(コミュニティ施設活用商店街活性化事業)、U商店街競争力強化基金助成金、V商業タウンマネジメント計画策定事業というものの概要と実績について紹介します。

I商店街等活性化事業:商店街等の活性化に向けた自発的な取組みに対しての支援。@空店舗を活用したチャレンジショップ、保育所サービス施設、高齢者交流施設の設置、運営 A循環買物バスの運行Bその他商店街の活性化に資する取組み 対象者:商店街振興組合、商工会、商工会議所、第三セクターなど

補助率:国1/3、都道府県1/3;申請者負担:1/3

U商店街競争強化基金助成金:商店街振興組合等が行うまちづくり計画策定事業、高齢者対応事業、環境・リサイクル事業等のソフト事業に対しての支援

助成率:@システム構築、実権事業、テナントミックス事業3/4

A調査事業3/5

B上記以外の事業1/2

(神奈川県の場合基金として13億円、神奈川県分の国の基金13億円ある)

 

V商業タウンマネジメント計画策定事業

 TMOまたはTMOの機能を担おうとする中小企業関係団体が、TMO構想またはTMO計画を策定するための調査・研究(研究会の開催、先進事例調査、アンケート調査の実施等)に対する支援

補助率:国1/3、市町村1/3;申請者負担:1/3

■実績

 いずれも地元の商工会議所、商工会、共同組合として申請する例が多いですが、コミュニティ施設活用商店街活性化事業では商工会議所、商工会以外に株式会社や社会福祉法人、さらにはNPO法人が補助金を得ています。今後、国の制度をより地元に近いものとするためにはNPOや株式会社(中小企業)が助成・補助対象となればいいとおもいます。ただ、このような補助金制度は、国自治体から補助金を得たとしても自己負担が発生しますし、そもそも補助金制度は税金でなりたっています。とはいえ国の制度は、誰かが何処かで勝手に活用する話ではなく、地元の皆さんの様々な事例に活用していただければと考えます。ただ国の制度も申請即採択ではありませんので(倍率は概算5倍〜10倍です)1.やるべきことを地元で固めておく。2.採択された先例を研究しておく。などして、申請者自身のアカウンタビリティを事前に高めておくことが、制度を利用できる近道だとも考えます。

 国の制度の中でも、ユニークなものをひとつ紹介させていただきたいとおもいます。地域新生コンソーシアム研究事業(地域コンソ)という制度です。この地域コンソという制度はそもそも1997年、通産省系の研究機関、独立行政法人NEDO(新エネルギー産業技術総合開発)の提案ではじまったものです。さらに地域コンソは管理法人というユニークな仕組みに則っています。先に地元の具体的な問題として挙げた「大学の研究室で開発した教材ソフトを地元で事業化する」というソフトの例・産学協同の例に尤も相応しい国の制度はこの地域コンソかもしれません。

 一般にいわれることですが、産学協同事業、大学などが開発したソフトを技術系の企業で事業化しようとする場合の、最大の弱点は「技術者がマネジメントも兼務しなければならないこと」ではないでしょうか。マネジメントの中でも特に「資金繰りとマーケティング」が技術者の苦手とするところです。

 地域コンソの仕組みの注目すべき点は、申請窓口を管理法人というものに絞っている点です。管理法人の役割は1. 行政への申請書類等をまとめること、2. プロジェクトの進行管理、特におカネの流れを管理すること、3. 事業化するソフトのマーケティングを考えること、です。

 管理法人のお陰で大学と企業の技術者は研究開発(もちろん事業化にむけてですが)に専念することができます。

 プロジェクトリーダーはあくまでも研究開発の中心であって、管理法人の役割とは切り離すことが可能です。4番目のプロジェクトは群馬大学と合資会社オリエンタルとの産学協同事業ですが、管理法人にNPOがなっています。

 管理法人をたてた地域コンソの仕組みは経済産業省の中でもユニークな制度です。

■地域コンソのプレーヤーとその関係

 管理法人方式によってマネジメントと研究開発が分離されることは組織論(特に中小組織にとって)からみても合理的にできています。また上の図"地域コンソのプレーヤーとその関係"には会計検査院がありますが、管理法人は会計検査の対象となり、ともすれば責任の所在があいまいになりやすい産学協同事業のアカウンタビリティにとってもよりよい仕組みではないでしょうか。

 本表(リンク)は関東経済産業局所轄の地域コンソーシアムプロジェクト全13件の一覧です。研究開発型のテーマのプロジェクトが並んでおり、さまざまな団体が管理法人(委託先)に名を連ねていますが、5、8、10番目のプロジェクトは株式会社が管理法人に名を連ねており、4番めのプロジェクトにはNPOが管理法人となっています。この4番めのプロジェクト「事務所系古紙の完結型小規模リサイクル装置の開発」は群馬大学と合資会社オリエンタルとの産学協同事業です。プロジェクトリーダーの久米原氏は群馬大学工学部教授であり、合資会社オリエンタルとの技術開発の中心人物です。管理法人の役割はプロジェクトのマネジメントであり、プロジェクトリーダーはマネジメントを考えずに技術開発に専念することができる仕組みです。

 "地域コンソのプレーヤーとその関係"をみてください。これはお金の流れと成果物(ソフト)の流れを示したものです。国家予算は財務省がにぎっていますので、経済産業省は「地域コンソ分の予算」を財務省に要求し予算が通った案件に対して財務省は「国」としてその額を支払います。(図では管理法人へは経済産業省が支払っているように見えますが、実際のキャッシュの流れとしては「国」から直管理法人にお金が支払われます。)管理法人は大学や企業などの研究実施者からの「請求」に従ってお金を支払います。もちろん研究実施者からの管理法人への「請求」はすでに経済産業省(各経済産業局)へ提出してあるプロジェクトの計画に則ったものである必要があります。このお金には研究者の人件費、交通費調査費(ソフト的支出)や機器の購入費(ハードへの支出)も含まれます。さらに管理法人自体も一般管理費としてソフト的支出枠が認められています。プロジェクトの途中途中で概算払い(要は分割払い)という仕組みも取り入れられています。そして、プロジェクトの成果物は成果報告書です。成果報告書は複数部所轄経済産業局に提出されそのうちの5部が国立国会図書館に収められます。成果報告書の内容は研究開発の概要、実施計画に対する成果、ハードウェア部分の説明、ソフトウェア部分の説明です。プロジェクトを行う過程において管理法人は、お金に関する出入り等所轄経済産業局の担当公務員に提出する義務があります。ただ国立国会図書館に未来永劫保存される成果報告書の中にはマネジメント(特にプロジェクト期間のお金の流れ)に関するデータはありません。図ではプレーヤーとして会計検査院も登場していますが、経済産業省ー管理法人、財務省ー経済産業省への破線矢印は会計検査院の検査対象を意味します。

 従って、管理法人が経済産業省へ提出する書類(金銭の流れとその使い道の趣旨等)は会計検査院への提出義務があります。92ページの図4番めのNPOは25,898,350円分国家予算を預かって国(経済産業省)になりかわって国(経済産業省)が必要とするプロジェクトを執行しているので、会計検査院の検査対象となる、という論理です。管理法人が会計検査の対象となる。ともすれば責任の所在があいまいになりやすい産学協同事業のアカウンタビリティにとってもよりよい仕組みではないでしょうか。ただこれは同時に、研究実施者は会計検査院の検査対象とはならず研究に専念できるとも同意です。もっとひらたくいえば国(経済産業省)が発注者で管理法人は受注者です。研究実施者は管理法人の外注さん、国からみれば孫請けなので、関知しない、ということです。

 管理法人をたてた地域コンソの仕組みは経済産業省の中でもユニークな制度です。管理法人方式によってマネジメントと研究開発が分離されることは組織論(特に中小組織にとって)からみても合理的にできています。また会計検査院に加えて財務省にもプレーヤーとして登場してもらっている意味は、国(経済産業省)の「発注」自体、税の使い道の観点から(他の使い道と比較して)合理的なものかどうかを判断するプレーヤーとしてのポジションの意味あいを含んでいるからです。地域コンソがよい結果をどしどしだせば発注者である経済産業省は他省にはばかることもなく財務省に遠慮することもなく会計検査院をケアすることもなく堂々と管理法人に発注することができます。そういうポジショニングを取ると研究実施者と管理法人と経済産業省とは利害が一致するプレーヤーです。これらのプレーヤーはチーム一丸となって"よりよい税の使い方のため"がんばらないといけません。これから管理法人に問われる能力はプロジェクトの管理能力ももちろんですが、よりよい成果物を創出する研究実施者をコーディネートする能力である、といえましょう。

 管理法人方式が経済産業省所轄のすべての補助金制度に取り入れられ、さらには他省庁の制度に取り入れられることが、中小企業の活性化に繋がるようにおもえてなりません。またマネジメント能力の備わったNPOが管理法人として複数の産学協同事業の管理法人として国の制度の窓口となることができれば、そのようなNPO自体は新しい雇用の受け皿として独り立ちできるようにも考えます。繰り返しますが管理法人自体も一般管理費を計上することができ管理法人自体の収入も確保できる仕組みです。管理法人方式の詳細およびプロジェクトファイナンスに準じた管理法人への中小企業金融公庫等からの制度融資の話も次にはさせていただきたいとおもいます。

 

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