オピニオン・コラム


立法府改革論 
もうひとつの政権交代へ向けて

 ようやく政権交代の議論が現実味をおびてきました。私も民主党に所属する議員として政権奪取に全力を尽くしていきたいと思います。ただ、国会議員として一年余り活動して参りましたが、本当の政権交代には与野党が入れ替わるだけでは絶対にダメ、永田町と霞ヶ関が入れ替わらないとならない!ということを身をもって実感してきました。

●永田町と霞ヶ関

 永田町と霞ヶ関、よくテレビや新聞、雑誌等で出てくることばです。それぞれが何を意味するか、もしくはその違いをご存じでしょうか。 

 永田町とは国会議事堂と議員会館と国会に附属する国会図書館がある地名です、霞ヶ関とは財務省や外務省といった各省庁がある地名です。要するに永田町は立法府を、霞ヶ関は行政府を象徴することばです。

 民主党と自民党と何が違うのか?という質問もよく頂戴します。それをひとことでいえば、民主党はこれまでの永田町と霞ヶ関の関係を180度シフトする。もっと判りやすくいえば永田町で法律をつくって、霞ヶ関に法律の執行を委ねる。ということになります。ではそれはどういうことで、どうすればいいのか。それには、永田町が立法能力を取りもどすことがどうしても必要です。

●これまでの永田町と霞ヶ関

 私は当初より文部科学委員会委員ですので、文部科学委員会(永田町)と文部科学省(霞ヶ関)を例に、現在の立法府と行政府の関係を説明させていただきます。文部科学委員会の最大の仕事は教育に関連する法律をつくることです。

 従って、国会会期中には、永田町にある私の部屋に文科省の職員が"法律案"を持って霞ヶ関からきます。そして文科省の職員がこれからつくる法律の趣旨を説明します。その法律案は文部科学委員会で委員会委員の国会議員によって多数決を取り"議了案件"として衆議院本会議に送られ、参議院を経て法律として成立します。2004年1月からの第159国会ではこのようにして135本の法律が成立しました。

 上の話は、法律をつくることが仕事である国会議員本人が説明していて、どう考えてもおかしい部分が感じられます。本来、国会議員が自分たちでつくる法律を「誠実に執行してもらうために」霞ヶ関の職員にその趣旨を説明するべき話であって、どう考えても話が逆になっているのです。

●永田町と霞ヶ関:質問取りに関して

 永田町の国会議員は"どのように法を執行しているか"について霞ヶ関の行政当局に質問をすることができます。教育行政文科委員会での質問は文部科学省中心となりますが、文部科学省に限らず関係する各省庁の職員を『政府参考人』として霞ヶ関から招致します。閣法の例とは違って、これはこれで理に適った話です。委員会の『政府参考人(局長・審議官)』への質問に先立って、霞ヶ関の職員(『政府参考人』の部下:課長・課長補佐クラス)が議員室にきて"どういう質問をするのか"を詳しく聞きとり"どういう回答であればよいのか"を議論します。

 このやりとりを"質問取り"と呼びます。"こどもをタバコから守る"という観点から私は文科委員会においてもWHOタバコ規制枠組条約について質問しました。その場合の"質問取り"は、条約の所轄官庁である外務省から5名、健康増進法の関連で厚生労働省から5名、たばこ事業法の関連で財務省から3名、喫煙補導の関係で警察庁から3名、学校敷地内禁煙の関連で文部科学省から5名、霞ヶ関の職員が入れ替わり立ち代わり、私の部屋にやってきて説明をし、膨大な資料をおいて帰ります。

 永田町の側は、私の他政策担当者が一人です。人数だけを考えても21対2、それに圧倒的な資料と洪水のように情報が霞ヶ関から押し寄せてきます。これではどう考えても"多勢に無勢、霞ヶ関の勝ち"です。外務委員会でもそうでしたが、外務や文科に限らず、これが永田町と霞ヶ関との"人と情報"に関する力関係の現実だと断言して間違いありません。

 議院内閣制(国会議員が総理大臣となって内閣を組織する仕組み)の中で、戦後60年以上ほとんど政権交代がなければ、政権を担当する与党は、法律をつくる作業を霞ヶ関に"アウトソーシング"して、できてきた法律案を委員会・国会で通過させるかどうかの権限(過半数)の部分だけ抑えておく。委員会などで議論すれば議事録に前例として残るので、立法にかかわる大事なところや微調整は立法作業を引き受けた行政当局と表にでてこない交渉や取引で決める"ここだけの話"の機会が閣法提出のたびにありえます。第159国会だけで閣法が120本、戦後159回の国会で平均120本づつ閣法を提出したとすると120×159=19,080、2万近い"ここだけの話"のチャンスがあったことになります。"ここだけの話"は英語にすればインサイダー情報、政権与党にとって、うまくいっている限り、こんなに楽でおいしいな話はありません。政官もたれあい利権構造の本質はこのあたりにあるように思えてなりません。さらにわが国では行政府の職員を官僚という畏敬を込めた言葉で呼び「そもそも官僚は優秀である上に、全国一円にくまなくはり巡らせた行政機構の末端から継続的に集積した情報を一手に保有する。常に選挙で分断されるリスクに対峙する議会は官僚に立法、政策立案を任せておけばよい」といった画一的な考え(パターナリズム)が長い時間のなかで与党のみならず、私たち日本人に染み付いてしまったのかもしれません。

 論より証拠、私は1年強の国会議員生活を通じて、正にこのラバー・スタンプや霞ヶ関の情報力・立法プロセスを実体験してきたことになります。しかし政権交代を目指す民主党がパターナリズムやラバー・スタンプ論、さらにいは"ここだけの話・方式"を前提とするのであれば、民主党は単なる政権与党の利権取得者であって政権交代の必要はありません。その自民党でさえ、前官房長官などは"役人は間違うことはない、ということになっている"という微妙な発言をしていましたが"人は間違うもの""霞ヶ関は間違うもの"、という前提にたって物事を考えるべきときにきているのではないでしょうか。

 ようやく「霞ヶ関が担ってきた機能を国会議員や地方に渡せば事態が今より悪くなる"と霞ヶ関の職員からでたとしても"その尊大さと脅しから出たものが即座に見抜かれてしまう時代に到達した」(科学技術文明研究所所長米本昌平氏2003.10.31産経新聞)という声も聞かれるようになってきました。

 ではどうすればいいのか。

 「民主主義における意思決定は選挙で選ばれたものによらなければならない」これは元ノルウェー首相・労働党党首で前WHO事務局長のブラントランド氏が2004.11.11青山の国連大学本部の講演で発言されたことばです。「市民が主役」これは民主党結党以来のスローガンです。誤解を恐れずに申し上げるとこれは「市民が(選挙で選んだ者が意思決定における)主役」という意味、ブラントランド氏の意味するところと同じです。政治家が意思決定のリーダーシップを取る。(法律をつくることは意思決定の重要な柱です)ただし市民は政治家がダメであれば選挙で落とす。政治家が決定で間違えば選挙で落ちる。これが民主主義の本分ではないでしょうか。

 政治家は徹底的に政策能力、立法能力をつけるのは当然のことですが、選挙の洗礼のない行政は意思決定すべきでなく(法をつくるべきでなく)、あくまでも法の執行者であるべきです。当選一回の野党議員として、選挙の洗礼をうけない霞ヶ関の圧倒的な力に対峙するにはどうすればいいか、をも考え続けてきました。

●解決策としてのシンクタンク

 「官僚による基礎資料や法案の秘匿は民主主義の原理に反するものだし、立法府が儀式的対決の場と化すのは発展途上国の光景のはずだ。わが国の唯一最大の政策シンクタンクとみられてきた霞ヶ関の外側に独立の政策シンクタンクをいくつか持つことである。」前述の米本昌平氏の意見です。

 確かに日本唯一最大のシンクタンクといえる霞ヶ関の力は圧倒的です。力の根源は人と情報です。霞ヶ関の官庁に所属する国家公務員は30万3,000人です。この数字が適正かどうかを論ずることはしませんし、法の執行(行政)には、法律をつくるより人手が必要なことは理解できます。永田町で霞ヶ関の30万人に人数的に対峙すべき、といった主張をするものではありません。行政府の情報力に対峙するにはどうすればいいかに絞って考えてみました。

 力には力、米本昌平氏がいわれるように霞ヶ関以外に(ただし霞ヶ関に対峙できるだけの)政策シンクタンクを作る必要があります。シンクタンクの生命線は情報です。1984年外務省にできた国際情報局初代局長となった岡崎久彦氏なども折に触れて情報の重要性をその著書で述べられています。ただ、収集し分析しそして活用する能力があってはじめて活きるのが情報です。私も含めて永田町の国会議員の情報力を高めるにはどうすればいいのか。米本氏などが主張するように"霞ヶ関の外に永田町はシンクタンクをもつべき"という考えには賛成ですが、そのシンクタンクが永田町の外ですと、これまで霞ヶ関にアウトソーシングしていたのと同様、その新しいシンクタンクに永田町に立法・政策をアウトソーシングすることになりかねません。(アメリカのようにブルッキングス研究所、アメリカンエンタープライズ、CFRといった非営利政策シンクタンクが政策提言を競うのは理想かもしれませんが、それにはアメリカ並みに非営利団体への税制優遇環境を整えない限り、質量と継続性を担保するのは難しいのではないでしょうか。この話もまたの機会に述べたいとおもいます)

 "シンクタンクは霞ヶ関の外へ!"ここまでは米本氏に合意です。ただしシンクタンクは永田町の中にあるべきです。立法・政策立案は永田町が自分達で考えるべきです。情報を収集し、分析し、そして活用する、この能力を永田町自身でつけるべきではないでしょうか。情報力の基礎は収集能力、情報の収集には地道で継続的な作業の積み重ねが必要です。(情報力には地道さの継続。特にこの"継続性"の意味では、選挙のある永田町は不利、選挙もなく頭数も多い霞ヶ関には非常に有利かもしれません)

 では永田町で、霞ヶ関同様に選挙の洗礼をうけないところは何処か。あるのならばそこを強化するべきではないか。という論法で国立国会図書館調査及び立法考査局と衆議院調査局、衆議院法制局という結論に至りました。

国会職員の情報力強化:その1国立国会図書館

 「今日のわが国民の悲惨な現状は、従来の政治が真理に基づかないで虚偽に基づいたからであります。議会がその任務を果たすことができないで、遂に官僚軍閥の前に屈してしまったのは、立法の基礎となるべき調査資料を議会自ら全く持っていなかったからであります」これは昭和23年第二回参議院本会議において、国会図書館設立にリーダーシップを発揮した羽仁五郎参議院議員が国立国会図書館法趣旨説明において述べたことばです。

 そこで羽仁五郎は「これまでのように官僚が立法する状態から完全に脱却して国会がその任務を果たすためにも、確かなる立法の基礎となる調査機関が必須」とし、国立国会図書館の設立にこぎつけました。国会図書館でも特に『調査及び立法考査局』は羽仁五郎のいう立法の基礎となる完備された調査機関として議員活動を補佐することを目的としています。

 羽仁五郎は北京で特高に逮捕されて終戦を迎えていますが、法律にわざわざ"官僚的偏見に捉われることなく"という文言を加えたりして昭和の進歩的知識人の気骨を感じます

 21世紀の今、昭和23年敗戦直後の羽仁五郎議員のことばをきいても新鮮です。永田町の先達が敗戦の反省にたって設立した立法補佐機関を活かし切っていなかったからこそ、戦後60年野党が野党に甘んじてきたのではないかとおもえるほどです。私たち国会議員が本当の立法府政権をめざすのであれば、羽仁議員のことばには耳を傾けるべきではないでしょうか。

 国会図書館なかでも『調査及び立法考査局』は国会議員の重要な"立法補佐機関"です。選挙の洗礼を受けない永田町『調査及び立法考査局』を強化する。それによって永田町の情報力を高め、日本最強のシンクタンク霞ヶ関に対峙する市民が主役の政権交代を目指すのであれば、まずは立法府の強化、『調査及び立法考査局』のシンクタンク化、それが国会議員の仕事だと考えます。

 次ページは国立国会図書館の組織図で、そのうち破線の中が調査及び立法考査局です。調査及び立法考査局の中で総合調査室、議会官庁各省庁に資料調査室、政治議会調査室に加えて各省庁に対応するように行政法務、外交防衛、財政金融、経済産業、農林環境、国土交通、文教科学技術、社会労働の8つの調査室と、海外立法情報調査室、計12の調査室からなります。局の総職員数は180名です。

 国会議員は調査及び立法考査局の国会レファレンス課を通じて調査を依頼し、レファレンス課は調査依頼に応じて各調査室に振り分けて、依頼内容にそった資料を用意し、必要な場合は、資料に添えて調査報告書も作成し、期限どおり提出してくれます。(調査報告書は情報の分析に該当します)あとは国会議員はその情報を分析し、活用した上で、行政に"質問"することになります。

●中立性の問題:党派を超えて

 国立国会図書館の調査員と調査依頼をする議員の関係は、顧問弁護士とクライアントの関係に似ています。例えばある弁護士事務所で弁護士チームAがトヨタの顧問をひきうけ、チームBがニッサンの顧問を引受けることは可能です。その場合も同じ事務所であっても弁護士チームABのやりとりに関しては厳しいルールがあるはずです。

 国立国会図書館の場合、調査及び立法考査局の調査員Aが民主党議員の依頼を受け調査員Aが他党の調査を受けることもあります。(少なくとも調査員Aが政党T、調査員Bが政党Uを担当する人的余裕はほしいところです。後述します)同じ党、同じ企業であっても弁護士や調査員がクライアント情報を漏らせば信用関係が崩れます。

 「議会で決定を行う人々は、調査を行う者に対して、前もって決めた政策を補強する材料の提供を期待する。他方、調査者は、いつ如何なる場合にも社会の支配的グループに屈服することなく、社会全体のために『科学的調査』という独自の価値を保守しなければならない」これは日本の国立国会図書館のみならず欧米の議会図書館でも重視されている言葉です。

要は国立国会図書館の調査は、中立的であること、科学的であることが必須です。逆にそれ故に、信頼に足る有為な情報を党派を超えて国会議員に提供することができます。

 

95年国会図書館の定員:850名

うち調査及び立法考査局:162名

04年国会図書館の定員:930名

うち調査及び立法考査局:180名

95年国会図書館の予算:162.2億円

うち調査及び立法考査局:1.4億円

04年国会図書館の予算:240.7億円

うち調査及び立法考査局:3.4億円

 95年度調査及び立法考査局の調査員ひとりあたりの調査費は86万円、04年度は調査員ひとりあたりの調査費は189万円です。

 (上記の"うち調査及び立法調査局"の予算は、立法調査業務関係経費の額です。ここには調査員の人件費、図書館として収集する資料〈調査にも利用〉費は含まれない)

 参考までに2002年度の在外公館の経費は、

 在ラオス日本国大使館の館員14名に対して活動経費が10.0億円、ひとりあたり活動経費は715万円、カンボジアでは19名に対して29.9億円、ひとりあたり1,575万円です。経費の少ないラオス大使館職員もこれだけの活動経費があれば在外公館にとどまることなくラオス国をくまなく調査することも可能でしょうし、カンボジアの在外公館職員が活動経費をカンボジア中の地雷の調査・撤去活動に使って協力したとしても、それがカンボジアに感謝され、わが国の国益に供するのであれば、それも必要だと思います。ただラオスに駐在するわが国の行政府公務員の活動経費が一人当たり年715万円、カンボジアが年1,575万円をもって在外公館の内外でわが国のために活躍していただく一方、立法府の公務員である国立国会図書館の調査員の皆さんは一人当たり189万円/年の調査費で事務室に籠って膨大な資料を中心に調査しています。(調査費189万円には資料購入費、刊行物の印刷製本費、法令議会データベース構築費、外部データベース利用料金がふくまれますが、交通費や飲食費・接待費等は至極当然の事ですがまったく含まれません)

 調査には1. リファレンス・リサーチと2. フィールド・スタディの2種類があります。(簡単にいうと1は読んで調べる2は見て・聞いて調べる です)リファレンス、フィールドお互いの調査が補完し合ってこそ、よりよい情報収集・分析が可能となります。これは調査の基本です。著書を読むだけでなく著者にインタビューすることも大切でしょうし、調査対象を訪ねて歩くフィールド・スタディは1. 調査員の調査能力を高める、2. 調査の精度を高める、意味においても重要です。

 「調査及び立法考査局」の調査員の調査の基本は日本最大の図書館の資料を中心としたリファレンス・リサーチです。これは立法を補佐するためにも重要なことです。ただ"立法の補佐"とは"国会議員の補佐"と同意です。その国会議員は全員"フィールド"において選挙の洗礼を受けます。であるならば立法を補佐する調査に、在外公館としてはもっとも低い水準であるラオス勤務の外務公務員の活動経費並に国税を割くことで、かなり精度の高いフィールド・スタディも執行できる環境が整うのではないでしょうか。(ちなみにラオスもカンボジアも一人当たりGDPは年500ドル以下ですから、ラオスの715万円/年もカンボジアの1,575万円/年も、現地ではかなり潤沢な活動経費であることにはかわりありません)

 また情報は収集し、分析し、そして活用してはじめて調査が生きてきます。情報を活用するのは国会議員の仕事です。現在の「調査及び立法考査局」の調査は情報収集に偏っているのではないでしょうか。(実際"クライアント"として調査依頼をさせていただいて感じることですが「日本最大の図書館から、国会議員の必要とする情報を収集し、控えめに分析した情報を添えてクライアントに提出」しているようにも思えます)立法府の情報員であるならば情報分析の部分に踏み込んでもらっていいのではないでしょうか。情報を活用するのは国会議員の仕事ですが、その国会議員にとっても主観的でない(他者による)分析が手持ちの情報として加わると、情報を活用する幅は広がるはずです。

 日本最大のリソース(国立国会図書館)によるリファレンス・リサーチに加えて、適宜フィールド・スタディを実施すれば、情報の精度が増すはずです。(難しいことをいっている訳でなく、『読んでから、書く』よりも『読んで見て聞いて、書く』方が確かです。"見てきた話しかしない講釈師"は面白くないかもしれませんが立法府の情報は確からしさが命です)。

 さらには調査員としての情報分析を国会議員に出す。国立国会図書館は定期的にISSUE BRIEF(調査と情報)という読み物をだしています。調査員の分析能力と情報精度はISSUE BRIEFで確認済みです。であるならば、その分析能力を(国会議員からの)個々の調査依頼に対しても発揮すべきです。個別案件にも情報収集だけでなく情報分析の部分が増せば、立法府としての情報力は増すはず。(クライアント(国会議員)と調査員との緊張感もより心地よく担保できるはず)これがここでの主張のひとつです。ここでは立法府改革論と銘打っていますが、ここでいう改革とは「立法府の調査能力を高める。情報(収集、分析、活用)力を高める」に尽きます。これまでの主張をまとめると、

1.リファレンス・リサーチにフィールド・スタディを加える

2.情報収集のみならず、個別案件にも情報分析を加味する

そうすると立法府の調査能力・情報力を強化される。ということになります。

 次に、調査及び立法考査局の調査能力、情報(収集・分析)力を強化する具体的な方法を述べます。調査能力強化策、それは、

1.調査及び立法考査局の予算を増やす

2.調査及び立法考査局の人数を増やす

3.調査及び立法考査局の人的独立性を高める

の三点に絞られるのではないでしょうか。(決算行政監視委員会でもこの主張を続けます)

1.予算を増やす:在外公館の活動経費水準へ

 立法府を組織としてみると衆議院、参議院、それに国立国会図書館からなります。在外公館は行政府を補佐します。国立国会図書館は衆議院参議院を補佐します。その意味では国立国会図書館は衆議院・参議院の在外公館といえます。

 立法府に所属する国会議員は自分達の情報力を高めるためにも、「調査及び立法考査局」の調査員の皆さんが、少なくともラオス、できればカンボジアの在外公館の職員諸君と同等の活動経費を割り当てるために予算を付けるべきではないでしょうか。これで「調査及び立法考査局」の皆さんがリファレンス・リサーチに加えて必要に応じてフィールド・スタディをできる環境もある程度整うはずです。

 ちなみに国会図書館の予算を決めるのは永田町です。実際には議院運営委員会の図書小委員会というところで決めます。予算行政を執行する財務省は図書館小委員会の決定した予算案にもとづいて、予算案を編成することになります。

2.人数を増やす:調査プロフェッショナル倍増

 これまで国立国会図書館は"調査及び立法考査局"の調査員もその他の図書館業務に携わる職員や事務系の職員も一括して募集し、試験により採用していました。これからは調査員の採用にあたって"調査及び立法考査局"独自で採用するべきです。そもそも図書館司書に代表される図書館業務と国会議員の活動を補佐する調査業務とはそもそも目指す動機や方向性が違うのではないでしょうか。それに国立国会図書館として一括採用し調査及び立法考査局の調査員として経験をつんだ人が図書館業務に廻されることがあるとするならばそれは、議員サイドからみれば"立法補佐能力"のロス、情報力のロスです。

 2004年10月の時点で"調査及び立法考査局"は180名ですが、調査フェチは大歓迎、できるだけ多く採用するべきです。国立国会図書館職員定員規程というもので10月の時点での定員は939名とされています。であるのであれば"調査及び立法考査局"の枠を360名に倍増し図書館業務は残りの枠579名でも可能です。939名はあくまで国会職員法にもとづくフルタイムの職員数です。館長、副館長等の運転手職も定員939名に含まれています。運転手職等の外部委託も考えるべきではないでしょうか。

 さらには図書館司書をパートタイムで希望する人材も豊富にいるはずです。180名の増員は年間60名募集で3年。"求む調査プロフェッショナル"を日本の高等教育機関、民間シンクタンク等のみならず国立国会図書館や各官庁が職員を留学させている海外の教育機関などに留学中の日本人に募集を掛ければ、"立法補佐"に相応しい人材が集まるのではないでしょうか。そもそも国立国会図書館の定員939名にしても立法府自らがその規程変更の意思決定をすればいい話ではないでしょうか。

3.人的独立性を高める:天上がり廃止

 現在、立法府の一部である国立国会図書館に行政府から職員が送り込まれています。具体的には審議官クラスで退職した省庁の職員が、直接あるいは所轄の外郭団体を経由して、調査及び立法考査局の専門調査員に赴任します。専門調査員の報酬は約2000万円弱/年、任期は4年です。現在5名の元行政府職員(審議官級)が調査及び立法考査局の専門調査員のポストを占めています。立法府が国権の最高機関であるならば、これは"天下り"ならず"天上がり"です。このような例は立法府の名誉のためにも即刻廃止すべきです。

 "立法を補佐する"調査及び立法調査局の専門調査員は調査のプロを目指す人であれば、間違いなく魅力あるポストではないでしょうか。立法府が自分達の情報力を高めるためには一にも二にも人材です。調査及び立法考査局を人生をかけた職域としてくれるような有為な人材をモティベートするためにも、専門調査員のポストは将来の彼等のために準備されるべきです。私たちが"永田町政権"を目指すのであれば、霞ヶ関の"天上がり"は身体を張って阻止すべきではないでしょうか。日本国内だけでなく、おそらく世界の大学・大学院で公共政策やリサーチ学を勉強しているような人材、将来永田町を支えてくれるような人材を視野にいれるべきです。

 政策立案・シンクタンクを霞ヶ関の外に配置せよ!勢いのよい言葉や響きのいい横文字を並べた言葉遊びでは、日本最強のシンクタンク"霞ヶ関政権"に対峙することは絶対にできません。優秀な霞ヶ関の諸君が雪崩をうって転職を望んでくるほどの職域を立法府の中に設計・構築できてはじめて"永田町政権"もみえてくるのではないでしょうか。

国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。(日本国憲法第41条)

 


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