外務オピニオン・コラム 2ーB


Bアメリカと国連 ブッシュ再選に寄せて

●今後4年間について

 アメリカはわが国にとって最も重要な国であることに異存はありません。しかしアメリカを磐石な運命共同体と位置付け、世界最強、圧倒的な力を有する軍隊をもつ米国との安全保障条約を国の外交の柱とし続けることの是非は常に議論し続けることは必要です。アメリカといえども国際社会の潮流には逆らうことはできないのではないでしょうか。では次の選択肢は何か。おそらく国連主導です。しかし今の国連では弱すぎます。ではどうすればよいのか。

 私が政治家として、外交を考えあぐねていたところにブッシュ大統領が再選を果たしました。私はブッシュ大統領を支持します。今後4年間彼の役割に"期待"します。ただ"期待"という言葉には楽観的な意味合いが含まれますのでいいかたを変えます。"アメリカ主導の国際政治に幕を引くこと"が今度のブッシュ政権に与えられた唯一最大のミッションとなる、との考えに至ることができたという意味で、ブッシュ大統領を支持します。さらにはブッシュ再選によって「アメリカが国連に本腰をいれることになる」との考えに至ることができたという意味で、今後のブッシュ大統領に期待します。

 「今後4年間でおそらくアメリカ対国連、アメリカの国連無視の構図がなくなるであろう。アメリカが国連に本腰を入れざるを得ないだろう。国連が国際政治の中心となるであろう。であるならば、わが国はなんとしても常任理事国の立場を獲得するべきである。そして国連の再構築に当事者として参画すべきである。そうすることがわが国の外交の軸となり、わが国の安定につながるであろう。であるならば政治家はリーダーシップを発揮してなんとしても常任理事国入りを完結すべきである」というのがブッシュ再選の後、私が思い至った今後4年間の外交シナリオです。ここでは、その理由などを少し詳しく説明いたします。

●イラクについて 

 いまだに出てこない"大量破壊兵器"の真偽はともかくも、イラクの平和はブッシュが負った責任です。「われわれはアメリカだけを相手に戦えばよかったが、アメリカはわれわれと国内世論の両方を相手に戦争をしていた。だからわれわれがアメリカに勝っても不思議ではなかった」これはベトナム戦争当時の北ベトナム外相グエン・コー・タック氏の言葉です。

 911は米国のみならず国際世論にとっても許し難い行為でした。しかしイラクと911との関係も明らかにならず、大量兵器もなく、1000名以上のアメリカ兵が死に、さらにはアメリカ兵によるイラク兵への虐待までが明るみに出ました。今回の選挙でブッシュは現職の大統領としてもっとも低い得票率(51%)にとどまり、投票総数の48%(ケリー候補得票)の世論がすでに敵であると考えていいのではないでしょうか。

 ケリー候補は「有権者の多くが政策ではなく、個人の信念や宗教観で投票した」という敗戦の弁を語っています。ブッシュ陣営がイラク問題を選挙の論点から逸らし、元来共和党の強い地域の特徴でもあるアメリカ孤立主義、内向き思考をうまく喚起した高度な選挙戦術による勝利ともいえないこともありません。しかし孤立主義とイラク戦争は本来相容れません。ブッシュ陣営が選挙戦術に優れていたとしても(宗教観や中絶問題等では価値観が異なった)民主党ケリー候補相手の戦いに有効なだけであって、今後、本来孤立主義と相容れなイラクでの戦争を選挙中の支持者をひきつける戦術には通用しないのではないでしょうか。

 2005年、年明け早々にそのイラクで国民議会選挙が予定されています。この選挙がイラク平和の鍵を握ります。イラクの平和はブッシュが掲げてきた責任です。またパウエル国務長官はじめ主要閣僚の辞任が相次ぐ第二次ブッシュ政権が新体制へ移行するにはある程度時間がかかるのではないでしょうか。イラクの選挙を無事に終える体制が組めるのか。選挙は投票開票が完璧ではじめて有効です。これはアメリカ世論がよく知っていますが、非対称戦争をアメリカにしかける側はもっとよく知っているかもしれません。守る側にとって選挙ほどの守り辛いものはありません。有権者が2000万人以上いる国の投票所をアメリカ兵が守るのでしょうか。

 「アメリカの若者が何故よその国で死ななければならないのか?」イラクの選挙は、ベトナム戦争の時と同じ考え方がアメリカ世論の大勢を占めるきっかけにならないのでしょうか。さらには選挙は国民の代表を選ぶ手段に過ぎないのであって、その後、国の議会を開催し、運営し続けなければなりません。

 「信念や主義、宗教的価値観」でブッシュが選挙で大統領に選ばれたとするならば、イラクにおいても宗教的価値観で国民の代表が選ばれるでしょうし、議会が運営されることも予想できますし、宗教的価値観から選挙を妨害する選挙戦術が取る可能性も否定できないのではないでしょうか。

 哲学論争のようになってしまいますので、手短かに纏めます。ブッシュを支持したアメリカの価値観でイラク問題が解決できるのか。ということです。私の答えはどう考えても「できない」ということになります。私は日本の国会議員ですのでアメリカが「できない」ことをとやかくいうことはありません。しかしイラク問題は他国事ではありません。わが国のことに限っていうと「解決できない問題に足を踏み入れてしまった」ということになります。「できない」では済まされない問題です。

 では、ブッシュを支持したアメリカの価値観の他にイラク問題に解決策はあるのでしょうか。答えは「ない」。あるとすれば「気の遠くなるような時間」だけが答えかもしれないという絶望感にさいなまれます。ただイラク問題に解決への道筋があるとすれば「国連」ということになります。

 アメリカ世論には厭戦感が蔓延し、新たな解決策を求める声がアメリカ世論からも国際世論からも高まり(おそらくアメリカの参戦に同調しなかった国が中心となります)国連に議論の場が移され、結果として国連が調停に乗り出さざるを得ない、という過程を経て解決への道筋が「国連」ということになります。

 さらには、アメリカの中でも「国連」に関する国際社会の動きを慎重に(かつ自分の国の問題として)見据えている人々は少なくないでしょう。おそらくアメリカでもっとも真剣に「国連」を考えているのは、今回も大統領選挙に敗れたアメリカ民主党ではないでしょうか。(そもそも国際連盟を提唱したものの議会の反対で加盟(1920年)できなかったのはアメリカ民主党ウッドローウイルソン大統領です。アメリカの国際連盟に反対したのは共和党議員です。また国際連合発足当時(1945年)の大統領も民主党トルーマンです。)

 民主党の中でも「国連」に関する世論の動きを最も真剣にみているのは、次の大統領選挙での立候補を視野に入れている人々ではないでしょうか。その中でも、ニューヨーク州の上院議員ヒラリー・クリントン氏が自分の大統領選挙戦略として、またその後のアメリカの国際戦略として「国連」を考えているように思えてなりません。そのような意味合いを含めてイラクの解決策への道筋が「国連」です。

●ブッシュからヒラリー

 先にブッシュ大統領の役割を"アメリカ中心の国際政治の幕引き"と述べましたが、これは"国連中心の国際政治の幕開け"とほぼ同意です。この考えを単純化すると「ブッシュの仕事はヒラリーへの引き継ぎ」となります。このラインだけをみるとブッシュ批判の映画「華氏911」などにも通じるジョークとも受け取られかねませんが、ここには批判もジョークも楽観もありません。アメリカがイラク駐留を続ける限り、まだまだ犠牲が増えることになり、おそらく日本人の犠牲者もひとりにとどまることにはならないだろう、というひとりの人間、日本人としても賛同できない悲惨な近い将来を推察した上で"国連中心の国際政治の幕開け"と申し上げているつもりです。

 政治は内政と外交に帰着します。政治家であるかぎり外交は重要な1本の柱だと考えます。内政のみならず外交における決定も、元ノルウェー首相で前WHO事務局長ブランとラント女史がいうように「選挙の洗礼をうけたもの」が行うべきです。職業外交官は政治家の決定の執行に徹するべきです。

 日本の政治家として、ブッシュ政権の4年間、わが国にとって何が必要かを、まずは考え抜き、それをぶれることなく主張し続けなければならないと考えました。そして今後4年間ブッシュ政権のあいだに、我が国がやるべきことは、「国連常任理事国のシートを獲得すること」に考え至りました。今でも確かにわが国は国連常任理事国入りを目指していますが、私が国連常任理事国入りをめざす理由は、おそらく今小泉政権や外務省の考えと違います。アメリカが本腰を入れる、入れざるを得なくなった国連であるからこその国連の常任理事国入りです。

 常任理事国入りへの賛否いろいろありましょうし、国連に関する議論もありましょう。しかしこれまでの国連はアメリカ抜きの国連、もしくはアメリカと対峙する国連でした。4年後の国連はアメリカが本腰を入れる国連です。伝統はあるものの倒産寸前の会社の歴史や財務諸表を精査することで、オーナーが変わった後の会社の未来を語ることは、誰が考えても愚かなことです。おそらく国連についても同じです。アメリカが本腰をいれた国連とそうでなかった国連とでは、根本的に異なります。

 かつて(1974年)わが国は中華人民共和国が国連に加盟することを阻止するために、中国加盟を指示するアルバニア案に対して逆重要議決案をアメリカとともに(わが国が主導権を取って)提出し積極的に国連ロビイ活動を展開しました。結果中国の国連ロビイング戦術に破れはしましたが、わが国は立場を旗幟鮮明にし身体を張って中華民国の国連残留に全力を傾けました。おそらく現在台湾と日本の関係が(正式には国交がないにも関わらず)良好なのは中華民国、台湾も日本の努力に感謝の意があってのことではないでしょうか。

 他国のためにもそれだけやったのですから、わが国のために全力を尽くして国連加盟を実現すべきではないでしょうか。"日本がアジアを代表して国連加盟を望むのであればわが国も"ということをインドがいいっているのであれば、オリンピック開催国招致合戦のごとく、一つの椅子をめぐってインドを敵にまわすのは愚策です。常任理事国を目指すといわれるブラジルもしかり、ドイツと争うなどもってのほかです。現在5カ国の常任理事国がひとつ増えて6カ国でなければならない理由など何処にもありません。日本はインド、ブラジル、ドイツと一緒に国連理事国入りを目指すための連携を組んで一緒に知恵を絞るべきです。そのことをまずはインド、ブラジル、ドイツに呼びかけるべきです。そしてインド、ブラジル、それにドイツの知恵と力を結集すべきではないでしょうか。

 さらにはイスラム圏の国を加えて、現在の常任理事国5か国を倍の10か国にする案などをわが国からまずはインド、ブラジル、ドイツに提案すべきです。共同で練り上げた案を世界に発信すべきです。そして国連加盟国を一国一国プレゼンテーションしてあるくべきです。イスラム圏の国ともイラクのあり方も含めて話しあうべきです。アメリカはもちろん、イギリス、フランス、それにロシア、中国の現常任理事国にも4か国で説得すべきです。政府だけでなくそれぞれの国の世論に対して4国連盟で世論調査やキャンペーンを繰り返すべきではないでしょうか。

 繰り返し繰り返し国連加盟国に、世界の首脳に、首脳のおかあさんにもわかることばで呼びかける。Mother's Mind Spirit!間違いなくいえることは、これは外務省の仕事ではありません。これは政治主導です。政治主導で国連常任理事国のポストを得るべきです。

 そうしてアメリカが本腰を入れた国連の再構築(リストラ)にわが国は当事者として参画するべきです。おそらく、そうすることが今後4年間のわが国の外交における最も重要な仕事です。

 日米安保の次を考える。それは国連です。ただし、アメリカ込み、日本の常任理事国入込みの国連です。

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